『AFTERNOON TEA JOURNAL』は、心の贅沢を愉しむ方々をゲストにお招きし、生活をちょっと豊かにするアイデアやインスピレーションをお届けするライフスタイルメディアです。

今回のゲストは、猫への愛を発信し、猫とともに生きる豊かさを啓蒙するプロジェクト『Cat’s ISSUE』を主宰するディレクターの太田メグさん。Afternoon Tea LIVINGとのコラボレーションライン「Cat’s NapTime(キャッツ・ナップタイム)」は今年11回目に突入。プロジェクト設立の経緯や活動内容、コムタンとの出合い、猫や仲間たちとともに子育てに勤しむライフスタイルなど、全8回にわたってお届け。第5回目は『Cat’s NapTime』の濃密なファンタジーの世界を生み出してきた、太田さんのクリエイティビティの源を探ります。

キャラクター設定を想像して
夢中になった、
名作ファンタジーの数々

人間と猫がともに“秘密のお茶会”に入会し、一緒にお茶を楽しんだり、お花や手紙を贈りあったり、時には冒険やイベントに出かけたりと、さまざまな共通体験を通して絆を深めあう『Cat’s NapTime』の世界。ストーリーテラーとして稀有な才能を発揮し続けている太田さんは、幼い頃から国内外のあらゆるファンタジー作品に触れて育ち、「いつか自分もファンタジーが生み出せる人になりたい」と願って人生を歩んできたのだそうです。

太田さんが影響を受けた作品のひとつ『ナルニア国ものがたり』(C.S.ルイス作・瀬田貞二訳) ©️ 岩波書店

「子どもの頃から、『指輪物語』・『ホビットの冒険』・『ナルニア国物語』・『霧のむこうのふしぎな町』など、ありとあらゆるファンタジーの名作を読んで育ちました。なかでも、物語に登場するキャラクターたちの設定を読みこむのが大好きだったんです。設定は、ファンタジー作品の根幹をなす最も大切な要素。特に、映画やアニメーションなどに映像化される場合、企画・シナリオやコンテ作成・キャスティング・ロケ地選定・撮影・演出・音声や楽曲・編集といったすべての膨大な映像制作プロセスは、キャラクター設定に基づいて実施されますので、生命線なんです

映画『ロード・オブ・ザ・リング』のロケ地として
ニュージーランドの観光名所になっている
ワイカト地方マタマタ町近郊のホビット村

「たとえば、ホビットという種族の体型や特徴・性格や性質・好む住環境や食生活・趣味嗜好などを徹底的に調べるんです。丘の中腹に水平に穴を空けて住居を作る彼らの家は“ホビットハウス(ホール)”とよばれ、丸いドアや半円型の出窓が特徴。玄関先にはよく手入れされた可愛らしい鉢花やハーブが茂っていて、あめ色になるまで使い込まれた木製の家具が並ぶウッディな内装のリビングの中央に設置された暖炉の前で、好きなフレーバーの葉巻を一服しながらくつろぐホビット……というように、設定に基づいた生活を送るキャラクターたちを想像するのに夢中になってしまい、肝心のストーリーがなかなか前に進まないほどでした(笑)。2001年に映画『ロード・オブ・ザ・リング』の第1作目が公開された時、スクリーンの中に広がる光景は、私が原作を読んで想像し、ワクワクと心を踊らせながら主人公たちとともに冒険していた風景そのもの。『この景色、知ってる!』ととても驚いたのを覚えています

大好きな『耳をすませば』。
猫キャラクターでいっぱいの
ジブリ作品

日本のファンタジーも大好きだという太田さん。特にスタジオジブリ作品がお気に入りで、猫好きで知られるスタッフが多くの地域猫とともに暮らす東京都小金井市のアトリエから生み出される名作の数々に大いに共感してきたそう。『となりのトトロ』のネコバス、『魔女の宅急便』の黒猫ジジ、『耳をすませば』『猫の恩返し』に登場する男爵バロンやムタなど、多くの猫キャラクターが世界中の人々に愛されています。

本好きの中学3年生・雫の姿が太田さんの青春時代と重なる
『耳をすませば』(1995年) © 1995 Aoi Hiiragi,
Shueisha/Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, NH

「宮﨑 駿監督のインタビュー記事を読んだ時、自分が愛してきたのと同じ作品からインスピレーションを受けていることを知り、とてもうれしくなりました。なかでも『耳をすませば』がお気に入りです。読書が大好きな主人公の月島 雫、彼女が恋する天沢聖司の設定が原作(画家)とアニメーション(バイオリン職人見習い)で異なること、小さなアンティークショップ『地球屋』に置いてある猫の人形・バロンの目をのぞきこむとファンタジーの世界へ迷い込んでしまうストーリーなど、すべてが大好きです」

『ジブリパーク』(愛知県長久手市)の「青春の丘」に建つアンティークショップ「地球屋」1Fにあるバロンの置物。
その目をのぞきこむと......!? ©︎ Studio Ghibli

設定を徹底的に重視するスタイルは『Cat’s NapTime』にも存分に生かされています。
『Cat’s NapTime』では、登場する猫たちのキャラクターや世界観など、商品やプロモーション施策には表現しきれないくらいの綿密な設定を考えています。人間と暮らしているリアルな猫たちがモデルになっているので、その猫のライフスタイルや性質などから現実的な要素を少しずつシフトさせてきて、そこになるべく連動させたストーリーやコンセプトをシーズンごとに考案し、商品展開に反映させるよう心がけています」

太田さんのファンタジー愛がギュッと詰まった
クッションたちと

2月19日(水)に公開される連載第6回目は、
太田さんが実家で引き取った保護猫あんこやコムタンら、
人生を変えた猫たちとの出合いや暮らしぶりを
ご紹介します。お楽しみに!

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