『AFTERNOON TEA JOURNAL』は、心の贅沢を愉しむ方々をゲストにお招きし、生活をちょっと豊かにするアイデアやインスピレーションをお届けするライフスタイルメディアです。
今回のゲストは、猫への愛を発信し、猫とともに生きる豊かさを啓蒙するプロジェクト『Cat’s ISSUE』を主宰するディレクターの太田メグさん。Afternoon Tea LIVINGとのコラボレーションライン「Cat’s NapTime(キャッツ・ナップタイム)」は今年11回目に突入。プロジェクト設立の経緯や活動内容、コムタンとの出合い、猫や仲間たちとともに子育てに勤しむライフスタイルなど、全8回にわたってお届け。第7回目は、猫との暮らしが子育てにもたらす影響をともに考えます。
愛猫コムタン・息子セコムくん・夫と4人家族で暮らしてきた太田さん。生まれた時からコムタンがそばにいたセコムくんは生粋の“猫ネイティブ”。成長するにつれてお互いに意思疎通を図るようになり、実の兄弟同然の関係を築いていったそうです。太田さんのInstagram(@megmilk5628)には、そんな彼らの生活ぶりがつぶさに記録されています。
「猫と人間どうし、最初から家族としてうまくやれるのではありません。ともに生活を営む中で少しずつお互いの役割を理解し、自分にぴったりのポジションを見つけていくんです。コムタンが子育てに参加してくれたことで、人間と動物は、共通言語を持たずとも、お互いの思いを伝えあいながらともに暮らせることを親子で身に染みて理解しました。
10歳になる息子は、言葉が通じない相手や、異なる意見を持つ相手に対し、様子をよく観察してから自ら考え、行動する習慣を身につけたようです」
「猫は本来騒がしいところを嫌う性質があるはずなのに、息子が泣くとすぐにスクッと立ち上がってとなりに寄り添うコムタンの姿を何度も見てきました。つらい時、自分専用の白くて丸いふわふわの猫がいつでもそばに来てなぐさめてくれるなんて、まるでおとぎ話のようですよね。でも、生まれた時からコムタンと一緒に育ってきた息子は、それが当たり前だと思っている。コムタンがいなくなってから、それが奇跡のような絆だったということにはまだ気がついていない様子で、ときどぎ寂しそうにしています。でもきっと今後、彼が成長するにつれて、コムタンとの関係がどれだけ尊いことだったのか、いずれ理解する時がくるのだと思います。息子のような“猫ネイティブ”の経験が、その後の人生や人格・考え方にどんな影響を与えていくのか、注意深く見守っていきたいです」
妊娠中も出産後もほぼ休むことなく仕事を続けてきた太田さん。親友・坂本美雨さんをはじめ、子どもを持つ猫好きの仲間たちとともに、猫を“推し”ながらチームワークでの子育てに取り組んできたことでも知られています。
「共通の好きな“推し”がいてその熱量が高ければ、肩書きや社会的ステータスとは関係なく、平等に交流でき、関係値が深まります。私の場合はそれが猫。猫好きな人とすぐに意気投合しますし、その人が愛する猫にも会い(吸い)に行きたいので、すぐにご自宅にお邪魔したり、こちらも招いたりします。留守中に猫のお世話を預かることも。そこで猫に対する姿勢や飼い方を見れば、『猫にこれだけ愛情が注げるなんていい方なんだろうな』と信頼できる。猫ときちんと暮らせている方に悪い人はいないと思うんです。自宅を行き来する仲になれば、自然と子どもを巻き込んだ家族ぐるみのおつき合いに進展し、子育てのつながりができます」
太田さんが築いてきた猫推しファンダムでは、セコムくんが幼いころは特に、誰かしらの自宅で、猫と一緒に複数の家族が食卓を囲むにぎやかな日々を過ごしたそう。
「猫のお世話を託せる方なら安心して子どもたちをお任せできますし、もちろんうちでもお預かりします。猫たちも安心してそばにいてくれますから、全員にとって安全なコミュニティが構築される気がするんです。息子もこれまでそうやって毎日たくさんの方にお世話になり、ほかの子どもたちやコムタンと全員一緒にバーコードのようにぎゅうぎゅうに並んで雑魚寝をしてきた結果、誰にでもすぐ打ち解け、多くの素敵なお友達に恵まれる子に育ちました。今となってはよかったのかなと思います」
猫たちが子どもたちと一緒にいてくれる安心感が、仕事と子育てに翻弄される毎日の生活の絶対的な精神的支柱になってくれていると、太田さんは語ります。
「子育てに正解はありませんし、今は“お母さんは専業主婦で家にいて、お父さんは外で仕事”という前時代的な手法を安易に踏襲できない時代です。特に、仕事に加えて家庭でも家事や育児を全面的に任されがちなお母さんたちは本当に大変ですよね。無数に山積する家事のどれひとつをとっても生きていく上で必要不可欠なことなのに、すべてがマルチタスク。女性がたったひとりで誰の助けも得ずにそれらを完璧にこなしてそのうえ仕事も……なんて酷です。学校でもちゃんと教えてあげてほしい。でも、それでも毎日の生活は続き、私たちは生きていかなければならない。そこで何かひとつ絶対的に愛せる“推し”を持てば、たとえうまくいかなくて悩んでも、メンタルがさほど揺らがず基本的には楽しく暮らせるのではないかと思うんです。猫はいいですよ! 『家に帰ればあったかい猫がいる』ことが自分の心のよりどころとなってくれますから」
「猫との暮らしは、人格形成に大きなインパクトを与えます。私は今、“生涯の猫”と定めたパートナーを失って、ここから先、どういう気持ちで暮らしていくのか? 新たな猫との出合いがあるのか? ……まだわかりませんが、猫と一緒に暮らす前の自分のことはもう思い出せないくらい、生活と思考の真ん中に猫がいます。外で嫌なことがあっても、『家に帰ればコムちゃんが待っているから、まあいいか!』と思って気持ちを前に前にと切り替えながら生きてくることができました。本当にありがたく思っています。『猫との暮らしは、人生の大部分を好転させてくれる』ということを、今後も発信し続けていきたいです」
次回、2025年3月5日(水)に公開される連載第8回目は
いよいよ最終回!
太田さんと『Cat’s ISSUE』が目指す猫と人間の共存社会の未来について語っていただき
締めくくります。
お楽しみに。