『AFTERNOON TEA JOURNAL』は、心の贅沢を愉しむ方々をゲストにお招きし、生活をちょっと豊かにするアイデアやインスピレーションをお届けするライフスタイルメディアです。
5人目のゲストは、カリグラフィー・アーティストのヴェロニカ・ハリム(Veronica Halim)さん。クラシック&モダンの両スタイルを融合させた美しいフォルムで紡がれる書体と、文字芸術の枠を超えて次々に創造・提案される斬新なライフスタイリングは“ヴェロニカ・スタイル”として独自の地位を確立し、世界中のフォロワーから熱い支持を集めています。Afternoon Tea LIVINGでは、ショッピングバッグを筆頭とする定番雑貨群に彼女のアートワークを採用。そんなヴェロニカさんの創作活動やキャリア形成に迫る全8回の連載コラムをお愉しみください。第6回目は、ヴェロニカさんが大好きな日本の素晴らしさをクローズアップ。日本に暮らす私たちがなかなか気づかない“メイド・イン・ジャパン”の製品やサービスに宿る美学を、鋭い審美眼でとらえ、たっぷりシェアしてくださいました。
ヴェロニカさんは自他ともに認める大の日本フリーク! Instagramのタイムラインには、日本滞在時に彼女がとらえた日本の美景や美食、友人たちと交流する楽しそうな様子、さらに日本文化をモチーフにしたカリグラフィー作品などの写真が並び、世界中のフォロワーたちの目を楽しませてくれます。
「日本の大学に留学し、卒業後もしばらく東京で働いていた父親の影響で、幼い頃から日本のカルチャーに親しみながら育ちました。日本のアニメや漫画が大好きで、出張や旅行のたびに彼が持って帰ってくる日本のお菓子やお土産を楽しみに待ち、日本の音楽を聴いたり、映画を観たりして憧れを募らせていました。2008年、両親とともに初めての日本旅行で訪れた時、それはそれはうれしかったです! 手に取るものや提供いただくサービスなど、接する事柄すべてが美しく、感動して一瞬で日本の虜になりました」
以来、ワークショップ開催やプライベート旅行などで日本各地をひんぱんに訪れるようになったというヴェロニカさん。来日前は、お気に入りのお店と、まだ訪れたことのない新規開拓先のお店とを半分ずつ並べた独自のショップリストを作成し、ツアーして回るのを至福の楽しみとしています。
「仕事柄、話題の文房具店やライフスタイルショップめぐりは欠かせません。カリグラフィー製品やさまざまなペーパーアイテムがそろう『Paper Tree®️』は、必ず訪れる行きつけのお店のひとつ。行くたびに新しい発見があります。帰国前には『ACOMEYA TOKYO』で、出汁や味噌など、インドネシアではなかなか手に入れることができない上質な日本の食材を大量に購入します。私はいつもワークショップに来るゲストたちのために用意したオリジナル画材やギフトをキャリーケースに入れられるだけぎゅうぎゅうに詰めて来日するのですが、帰国時は満杯のお土産で往路以上に重たくなってしまうんです……本当に悩ましいですね(笑)」
そして日本各地で人気の名物グルメチェックも欠かせないライフワーク。来日したら必ず食べるのがロールケーキなのだそう。
「日本のロールケーキは世界一だと思っています。スポンジケーキと生クリームという極めてシンプルなコンビネーションなのに、あんなに美味しいお菓子になるなんて信じられません。日本では、食材そのもののよさを活かし、時にシンプルに、時に大胆にアレンジした栄養価の高い料理がどこででもいただけるので、本当にありがたいです。日本食のほのぼのとした温もりあふれる味わいを『やさしい』と感じます……これは私の大好きな日本語です!」
文房具・日用品・食材など、ヴェロニカさんの心をつかんで離さない“メイド・イン・ジャパン”製品やサービスの最大の魅力は、長い間連綿と磨き続けられ、受け継がれてきたクラフツマンシップにあると感じているそう。現代美術家の杉本博司さん・音楽家の坂本龍一さん・アニメーション監督の宮﨑 駿さん・SIMPLICITYの緒方慎一郎さんなど、彼女が尊敬してやまないという日本人アーティストの作品にも通底する共通項だといいます。
「日本製の品には、作り手たちのものづくりに対する情熱やひたむきな姿勢・自然への感謝・思慮深さといった奥ゆかしさを感じます。製品もサービスも、使う人や提供される人の気持ちに配慮し、細部まで考え抜かれたうえですべてがうまく設計されていると思います。さらに、どの都道府県にも昔から愛されてきた独自の伝統芸術や伝統技能が存在し、現代に合った手法でプロモーションされ、地元の人々はもちろん、世界中の人々から賞賛され、愛され続けていることも素晴らしいです」
そうした日本のものづくりに宿る美学は、ヴェロニカさんに深い感銘を与えるとともに、彼女が生み出すカリグラフィーのデザインや作風、さらに作品のプレゼンテーション手法など、創作にまつわるさまざまなアプローチに対してインスピレーションを与え続けているのです。
来日時は東京を拠点に都市エリアで過ごすことが多いというヴェロニカさんですが、思い切ってカントリーサイドへも足を伸ばすことも。ひと時の間忙しない都会の生活から離れ、大自然に囲まれて心身ともにデトックスの時間を設けるのが最高のリフレッシュ方法なのだそうです。
「私が暮らすジャカルタでは、急激に進行した都市化や暑さ対策のため、どこへ行くにも車で移動しなければならず、なかなか気軽に街歩きを楽しめる環境ではありません。日本ではどこでも散歩ができるので本当に楽しいんです。木々の中を歩きながら創作のヒントを見つけるのが好きですし、地元のお店を回って職人さんたちとの会話を楽しんだり、彼らの日常生活を観察したり、時には仕事場にお邪魔して彼らが技術を駆使する様子を見学したりするのがとても貴重な体験となっています。私にとって日本はインスピレーションに満ちた大切な場所。穏やかで、伝統的な要素と現代的な要素がシームレスに融合した稀有なムードを備えています。日本を訪れるたびに、心を落ち着かせ、頭の中をスッキリとクリアにすることができるんです」
次回、6月18日(水)に公開予定の連載第7回目は、アーティストとしての創作活動をはじめ、
クライアントワークやワークショップ開催など、ヴェロニカさんが人々に広めていきたい
カリグラフィー・アートの魅力と真髄に迫ります。お楽しみに!