『AFTERNOON TEA JOURNAL』は、心の贅沢を愉しむ方々をゲストにお招きし、生活をちょっと豊かにするアイデアやインスピレーションをお届けするライフスタイルメディアです。

5人目のゲストは、カリグラフィー・アーティストのヴェロニカ・ハリム(Veronica Halim)さん。クラシック&モダンの両スタイルを融合させた美しいフォルムで紡がれる書体と、文字芸術の枠を超えて次々に創造・提案される斬新なライフスタイリングは“ヴェロニカ・スタイル”として独自の地位を確立し、世界中のフォロワーから熱い支持を集めています。Afternoon Tea LIVINGでは、ショッピングバッグを筆頭とする定番雑貨群に彼女のアートワークを採用。そんなヴェロニカさんの創作活動やキャリア形成に迫る全8回の連載コラムをお愉しみください。第2回目は、彼女の幼少期から成人するまでの半生記。中国系インドネシア人の家庭に育ち、多国籍文化がもたらす恵みを全身に浴びながら自身のクリエイティビティを磨き続けてきた軌跡をたどります。

豊かな創造性と強いリーダーシップを
育んだ
ダイバーシティ環境

中国にルーツを持つインドネシア人の両親のもと、シンガポールで生まれ、インドネシアの首都ジャカルタで育ったヴェロニカさんのバックグラウンドはダイバーシティそのもの! 約18,000の島々からなる島嶼(とうしょ)国家として知られるインドネシアは、約300の種族が暮らし、500以上の言語が話されている超多民族国家。公用語のインドネシア語のほか、両親が話す中国語、そしてテレビからひんぱんに流れてくる英語やフランス語といった多言語環境で育ったヴェロニカさんは、生粋の多国籍文化人なのです。

ヴェロニカさんが拠点としているインドネシアの首都・ジャカルタ。多文化・多言語・多宗教のもと、さまざまな民族からなる1,000万人以上の人々が暮らす、国際色豊かな東アジア随一のメガシティ

「長女として生まれたせいか、親族の子どもたちの中でも常にリーダーシップを発揮していたように思います。成長するに従って、自然と“みんなのお姉ちゃん”のようなポジションを担うようになり、私が先生役となってお絵描きやダンスなどのさまざまな“ごっこ遊び”をするのが大好きでした。遊びの内容について想像を膨らませながら、年下の子どもたちの面倒を見て、皆が仲よく楽しく遊べるように工夫しました。こうした幼い頃の経験が、現在ワークショップなどを通じてほかの人の創造性を育むことを生きがいとする、私らしい“愛”のスタイルを培ってくれたような気がしてなりません

ペーパークラウンをかぶった弟とともに記念撮影に臨む6歳のヴェロニカさん(左)。「我ながらとても面倒見のよい子どもだったと思います」 © Veronica Halim

少女時代のヴェロニカさんが特に夢中になったのが、日本の漫画やアニメ、そしてレターセットやシールなどのペーパークラフト収集。アート色の強いクリエイティブな事柄に、大変熱心に取り組んでいたそうです。

「可愛い封筒や便せん・シールなどをせっせと集めては、友達と交換していました」というペーパークラフト収集は今もヴェロニカさんの生活を豊かにしている大切な趣味

「『キャンディ・キャンディ』や『ガラスの仮面』といったコミックを読み、『聖闘士星矢』や『美少女戦士セーラームーン』といったテレビアニメを観て育ちました。絵を見るのも描くのも大好きで、細かなディテールに至るまで観察してはその造形美に感動していました。そんな私を見た母は、水彩画や油絵・陶芸・ピアノなど、さまざまなカルチャー教室に通わせてくれたんです。どのレッスンもまるで自分の天職であるかのように楽しく熱心に取り組んだ記憶があります」

メルボルン、そして上海へ。
国際都市でアートへの造詣を深め、ビジネススキルを磨く

ハイティーンになっても、子どもの頃から抱いてきたアートへの情熱は一向に冷めることなく、グラフィックデザインが学べる大学への進学を決意。両親の温かいサポートもあり、故郷を飛び出して、IT・デザイン・アート分野に強いオーストラリアの名門・スウィンバーン工科大学(Swinburne University of Technology)へと留学。ビジュアル・コミュニケーション学を専攻します。

陶芸のワークショップで創作に励む18歳のヴェロニカさん。幼い頃から抱いてきたものづくりへの情熱が留学の道へと導いてくれた © Veronica Halim

「私が通っていたキャンパスは、当時、首都メルボルンでもおしゃれエリアとして人気のプラーラン(Prahran)の近くにありました。多様な文化をバックグラウンドに持ち、クリエイティブを志して世界中から集ってきた若者たちで形成されるコミュニティはとても刺激的で、留学生活は大変充実したものとなりました。私はここで、クリエイターとして自身が目指すべき将来の展望に加え、自立心を養い、人間としても多面的に成長することができたと思います

大学卒業後、「他の外国でも生活してみたい!」と思い立ったヴェロニカさんは、両親のルーツの地でもある中国・上海へ。1年半の間、中国語を学びながらインテリアデザイン会社でアルバイトをし、さまざまなプロジェクトを通してクリエイティブの仕事現場を経験したそう。

近代的な高層ビルが立ち並ぶ浦東エリアと、西洋文化が色濃く残る外灘エリアを擁する国際都市・上海。中国第1の商業都市での生活で、ヴェロニカさんはクリエイティブビジネスのノウハウを学びます

「インドネシアともオーストラリアとも異なる文化的背景を持つ人々とともに働き、新しい仕事のスタイルやペースに適応し、多様なクライアントとのコミュニケーション手法を学ぶことができて、とても貴重な経験でした。ビジネス・プライベートの両面において、私の視野をグッと広げてくれた気がします」

約5年半にわたる海外生活で大きく成長したヴェロニカさんは、故郷インドネシアに帰国したのち、デザイン事務所を数社ホッピングしながら、 5年間に渡りクリエイティブ業界で実務経験を積みます。やがてビジネスパートナーである夫とともに、企業のブランディングに特化したデザイン会社を設立。クリエイティブへの情熱と起業家精神とを結実させ、人生の新章をスタートさせます。

次回、5月21日(水)に公開予定の連載第3回目は、自身の事業を軌道に乗せ、趣味であったカリグラフィーを
ビジネスの主軸に据えて活躍を始めるヴェロニカさんの成長を追いかけます。お楽しみに!

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