『AFTERNOON TEA JOURNAL』は、心の贅沢を愉しむ方々をゲストにお招きし、生活をちょっと豊かにするアイデアやインスピレーションをお届けするライフスタイルメディアです。
4人目のゲストは、昨年Afternoon Tea LIVINGとの初コラボレーションを果たした、ロンドンを拠点に活動するスイーツアーティストのKUNIKAさん。競泳選手を目指して水泳に明け暮れた少女時代から一転、パティシエを志して進学し、一流ホテルやヴィンテージショップに勤務。日本初の“スイーツアーティスト”として独立し、人気を博したのち渡英。現地でのパティシエ業やコロナ禍下での結婚・出産を経て、現在は子育てをしながら創作活動に勤しむ彼女の激動の人生を全8回にわたってお届け。最終回となる第8回目は、子育てに奮闘しながら今後のアーティスト人生を模索する彼女の現状と、私たちが彼女の人生から学ぶべき人生のTIPSを考えます。
2023年2月に誕生した長男も早や2歳。今年4月からいよいよ週15時間の保育園(Nursery)が始まり、KUNIKAさんファミリーの生活サイクルは次のステージへとシフト中。忙しい毎日を送るなかで、子育てと創作、それぞれの時間を捻出できるよう意識的に励んでいるそう。
「子育て中であってもお仕事のオファーはできるだけお受けしたいですし、仕事を優先するあまり、家族と一緒に過ごす時間を減らしたり疲れ切って消耗したりするのは残念なので、日中は家事や育児の時間に、子どもを寝かしつけた22時ごろから深夜1時すぎまでを製作の時間にと、メリハリのある時間配分を心がけています。時間は自分で作り出すものなんですよね。息子が活発に行動するようになってきたので、私ももっと体力をつけなくては! 創作モードに気分を切り替えて集中するスイッチは ……気合い!」
当面の目標は、ロンドンと東京、両都市での個展を開催することなのだとか。
「個展はお仕事を増やすビッグチャンス。世間に向けて自分の作品を発信する機会を定期的に作る必要性を痛感しています。ロンドンで個展をやってみたいのですが、ノウハウにも語学力にも自信がないので、どうやったらチャンスをつかめるのか模索中なんです。特にSNSでの発信方法は私にとって大きな課題なのかも。とりあえず、Instagram(@_kunika_)を自分の美術館のように運営しながら、リアルに作品を観ていただける機会と場を早急に設けたいです」
新型コロナ禍を機にお菓子づくりに目覚め、アイシングクッキーを発信する人が一気に増えた昨今。そのはるか先を全速力でひた走ってきた第一人者であるKUNIKAさんが、今改めて大切にしていることは何でしょうか?
「私らしい独自の世界観を拡げ続けること。たとえ自分の名前を添えていなくても、観る人が『KUNIKAの作品だな』とすぐに察してくださるようなオリジナリティを出すことです。今はロンドンでの生活やヨーロッパ各地の旅先で得た経験が貴重なインスピレーションの源。空や海や自然、街並みや建物のファサード、花や植物、動物や魚たちなど、その造形や模様や色あいが自分自身に刻み込まれた記憶と混ざりあって、まるで化学反応を起こすように自分にしか創り出せないようなデザインを形成し、自らの手を通してクッキーというキャンバスに描き出されているような感覚です。『KUNIKAらしさって何だろう? どうやったら出るんだろう?』と常に考えながらアイシングのコルネ(ペン)を走らせています」
パティシエになるという夢を叶え、さらに独自の道を追求してスイーツアーティストになったKUNIKAさんは、自身の“好き!”を仕事にし続けている稀有な存在。叶えたい夢を常に口に出しておき、チャンス到来の際は絶対に逃すことなく、憧れの人とともにやりたいことをやる。しかも、どのプロジェクトに対しても自身が納得のいくまで徹底的に取り組み、極めて完成度の高い作品を創り上げる硬派な姿勢は、一昼一夜で身につくものではありません。
「地道にトレーニングを続けて基礎となる技術・知識・体力などを身につけておき、やると決めたら全力でやり抜こうとする姿勢は、少女時代を水泳に費やした賜物(たまもの)なのかもしれません。これまでさまざまな人生の岐路に立ち、気の向くまま直感的に選んだ道でなんとか生きてこられたのも、パティシエとしてのスキルがあったからこそ。英語に不安があっても“手に職”があるおかげで、今もこうしてロンドンで暮らせているのだと感謝しています」
今は世界情勢も含めてとても不安定な時代。この先どんな未来が待っているのかも、自身の経験がどのように生きるのかもまったくわかりませんが、不安でも怖くても『とにかくやってみる』ことが大切だとKUNIKAさんは主張します。自分が『やりたい!』と思ったことを選んで頑張れば、必ず次のステージが見えてくると信じているそう。
「ロンドンに来た当初は戸惑ってばかりだった私も、たくさんの人と出会って、仕事を見つけ、結婚も出産も経験して今に至ります。しかも、SNSをやっているとさまざまな情報が洪水のように襲ってきますから、ほかの人と比べて落ち込んだりすることも。でも、好きなことに取り組んでいる自分を大切にしてあげたいんです。もしうまくいかない時期があって不安や孤独を抱えても、それも自分の一部なんだと受け入れて、時には甘やかしてあげたりしながら、乗り越えられそうな方法を探りたい」
ピンチに陥った自分を救ってくれるのが“好き”に浸る時間。好きなもののチャンネルをひとつでも多く持っていると、今いる場所で困難に陥っても、別の場所にふわりと切り替え、別の“好き”からエナジーチャージして楽しみながらチャレンジを続けることができるのだとKUNIKAさんは言います。
「今は子どもがいるので、“旅に出る”というチャンネルはお休み中。そのかわり、息子と一緒に近所の公園で花を眺めながら日光浴をして癒されるチャンネルや、大好きなアンティーク雑貨をハントしに行く時間を想像して楽しむチャンネルが稼働しています。こうして日々の生活や過去の経験から得た宝物のかけらを集めて作品へと昇華させていくのが、今の私のターンなのかなと思います。自分が作りたいものに情熱を傾け、やり遂げた先に待っているであろう楽しいできごとや素敵な出会いを想像してワクワクしながら生きていきたいです」
精巧で幻想的な美しい世界観を支える高いスキルと知見。スイーツアーティストとして
グローバルに躍進しようと努力を続けるKUNIKAさんをフォーカスした全8回連載、
お楽しみいただけましたでしょうか? AFTERNOON TEA JOURNALでは、今後も国内外で活躍するクリエイターの
魅力やライフスタイルをご紹介していきます。引き続きお楽しみに!