『AFTERNOON TEA JOURNAL』は、心の贅沢を愉しむ方々をゲストにお招きし、生活をちょっと豊かにするアイデアやインスピレーションをお届けするライフスタイルメディアです。

4人目のゲストは、昨年Afternoon Tea LIVINGとの初コラボレーションを果たした、ロンドンを拠点に活動するスイーツアーティストのKUNIKAさん。競泳選手を目指して水泳に明け暮れた少女時代から一転、パティシエを志して進学し、一流ホテルやヴィンテージショップに勤務。日本初の“スイーツアーティスト”として独立し、人気を博したのち渡英。現地でのパティシエ業やコロナ禍下での結婚・出産を経て、現在は子育てをしながら創作活動に勤しむ彼女の激動の人生を全8回にわたってお届け。第7回目は、KUNIKAさんを支えるインスピレーション源の重要な要素のひとつである旅。ヨーロッパ中23カ国を旅して回った経験とそこで得た知見を、素敵な写真とともに振り返ります。

乗り越えられない壁があったら、
ひとまず旅に出る

サントリーニ島やミコノス島を訪れた時の写真。青い空に海・建築・ブーゲンビリア・ハンドメイドプレートの模様など、目にするものすべてが可愛らしく感動したそう

人生においてチャレンジを続けていると、何度挑んでもなかなか超えられない壁にぶち当たることがあります。強い意志を持って臨み、粘り強く努力を続けようとしても上手くいかなかったり、マンネリやスランプに陥ったり……そんなKUNIKAさんを救ってきたのが“旅に出る”という選択肢。

時には壁の前から離れて気分転換してみるといいと思うんです。私の場合はそれが旅でした。マンダリンオリエンタル東京を退職したあとに滞在した石垣島や、渡英後に『PEGGY PORSCHEN(ペギー・ポーション)』をいったん退職して旅して回ったヨーロッパ諸国。そこで見たものや経験したことが心身のリフレッシュと充電につながり、その後の人生を再び歩み出す原動力となったからです」

そこで、YMS期間の2年間で23カ国もの豊富な訪問経験を誇るKUNIKAさんに、特に印象的だった国とそこでの経験を伺いました。

ドイツ・ドレスデンの
クリスマスマーケット

世界最古にして最大規模を誇るドレスデン旧市街のクリスマスマーケット。ジンジャーブレッドなどを扱うショップからメリーゴーランドまでがひしめきあい、まるで夢の世界のよう!

ドイツ東部・エルベ川沿いに位置し、ザクセン王国の都として繁栄した古都ドレスデンでは、世界最古といわれるクリスマスマーケットを訪問。アイシングクッキーアートで名を馳せたKUNIKAさんにとって絶対に見逃せなかったのが、シュトーレンと並ぶクリスマスのお菓子として有名なジンジャーブレッドです。「ツリーにサンタクロースや雪だるまなど、冬のシーズナルなモチーフに描かれた素朴なアイシングアートが手づくり感満載で可愛らしく、ジンジャーの芳醇な香りとともに記憶に深く刻まれています。真冬の屋外は寒く、白い息を吐きながら店を回りましたが、心はとっても暖かくて、子どものころから抱き続けてきたクリスマスへの憧れを思い出しながら童心に帰れるおもちゃの世界のようでした

スペイン・イビサ島の
トワイライトタイム

(右)イビサ島の沖に沈む夕陽。「この先もずっと自然が与えてくれる美しさに触れ、感動しながら生きていきたいと思いました」(KUNIKAさん) (左)楽しいナイトクラビングタイムに突入しようとする旧市街の夕景をキャッチ

スペインの首都バルセロナから約1時間のフライトで到着するイビサ島は、地中海に浮かぶ魅惑の楽園。
美しいビーチとナイトライフが有名なほか、世界遺産に登録された旧市街のダルト・ビラや、数々の伝説が残る神秘的な自然景観など、見逃せない魅力でいっぱいです。ここでKUNIKAさんのハートをグッとつかんだのが、地平線に沈む夕陽の美しさ!「海と夕焼けが大好きで、これまでに何度も作品や個展のコンセプトモチーフとして掲げてきた私にとって、ターコイズブルーの海と空、そしてオレンジの夕日が溶けあうようなマジックアワーはまるで天国の風景のようでした。友人と一緒に訪れたのですが、現地があまりに気に入ってひとり居残り、島の北部エリアまで足を伸ばして絶景ハント。ここで眺めた複雑で豊かな色彩は、今でも私をインスパイアし続けてくれています

モロッコ・マラケシュの
アラベスク模様

(左)マラケシュで3泊したリヤド。KUNIKAさんの部屋には時折猫が遊びに来ることも (右)イスラム建築や美術に見られるアラベスク模様がKUNIKAさんのクリエイター魂を大いに刺激

アフリカ・サハラ砂漠の西に位置するモロッコのほぼ中央にあるマラケシュ。最初のイスラム国家・ムラービト王朝の都として11世紀後半に興り、歴代王朝の栄枯盛衰を見守り続けてきた古都は、“世界一にぎやか”と称されるジャマ・エル・フナ広場やクトゥビア・モスクを擁する旧市街(メディナ)と、新しいカフェやブランドショップが立ち並ぶモダンな新市街とが共存する不思議な街。「ポルトガルからスペインへと旅したのち、締めくくりとして最後に訪れました。特に惹かれたのが、街じゅうのいたるところにあふれるアラベスク。植物の茎やつる・葉・花などを組み合わせた幾何学的な模様を見て、伝統的なカルチャーに大切に育まれてきたクラフツマンシップの数々を全身に浴びるという、クリエイターとしてかけがえのない貴重な体験ができました

旅することで自分を見直し、
再び自身の人生を生きる糧に

数カ月にわたる濃密な旅人ライフを通じてさまざまな文化や人々に触れ、好奇心を抱きながら豊かな感性を育み、その後の創作活動へと着実にリンクさせる。もといた場所にきちんと戻ってきて、また新たな道へと歩み出すのがKUNIKAさんの強さであり魅力です。

ギリシャ・サントリーニ島での夏の思い出をモチーフに、KUNIKAさんが新型コロナ禍中に作ったアイシングクッキー

「2017年に渡英して以降たくさんの国を訪れましたが、思い返すと常にさまざまなことを考えていました。自分が今何をやっているのか・何がやりたいのか・どこへ向かっているのか……初体験と試行錯誤が続く波瀾万丈な海外生活では、常に自分自身をしっかり保っていないと一瞬で吹き飛ばされてしまいます。本来自分が歩むべき道・歩きたい道を見失わないために、“旅する時間はインプットに集中する”ことを心がけています。とにかくたくさんの景色を見て、空気を肌で感じ、たっぷりと刺激を受ける。『ほかの人が切磋琢磨して必死に頑張っている時に、自分はこんなにのんびりと自由を満喫していていいのか?』と不安になるのではなく、人と比べることをやめて、今この瞬間しかできないことを全身で楽しんでいる自分を信じてあげるんです。その経験がきっとこの先の人生を切り拓いてくれるかけがえのない宝物になるはずなので」

次回、2025年4月30日(水)に公開される連載第8回目はいよいよ最終回!
子育てをしながらスイーツアーティストとして次のステップを模索するKUNIKAさんの現状と、
彼女の人生から私たちが学ぶべき人生のTIPSを考えます。お楽しみに。

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