『AFTERNOON TEA JOURNAL』は、心の贅沢を愉しむ方々をゲストにお招きし、生活をちょっと豊かにするアイデアやインスピレーションをお届けするライフスタイルメディアです。

4人目のゲストは、昨年Afternoon Tea LIVINGとの初コラボレーションを果たした、ロンドンを拠点に活動するスイーツアーティストのKUNIKAさん。競泳選手を目指して水泳に明け暮れた少女時代から一転、パティシエを志して進学し、一流ホテルやヴィンテージショップに勤務。日本初の“スイーツアーティスト”として独立し、人気を博したのち渡英。現地でのパティシエ業やコロナ禍下での結婚・出産を経て、現在は子育てをしながら創作活動に勤しむ彼女の激動の人生を全8回にわたってお届け。第5回目は、イギリスでの出産・子育て事情を深掘り! 目まぐるしい毎日の中でKUNIKAさんを癒すブレイクタイムについても伺いました。

王妃も一般市民もほぼ日帰り!?
イギリス流・超スピード出産のリアル

ロンドンを代表する人気レストラン『sketch』在職中に妊娠し、夫とともにロンドンで出産することを決意したKUNIKAさん。イギリスでは、外国人であってもNHS(National Health Service/公的医療保険制度)の対象となり、妊娠・出産・産後の家庭訪問にいたるまでのすべてが無料。助産師(Midwife)がサポートします。

「里帰り出産は考えなかったです。夫は仕事がありますし、子どもが誕生することは一生に一度しかない大切な瞬間ですから、夫には出産にまつわるすべてを見守っていてほしいと思いました……とはいえ、身近には出産経験のある相談相手がおらず、妊娠・出産に関する英語に関してもハテナの嵐で、本当にわからないことだらけ!スマートフォンを片手にインターネット検索して情報収集に励む日々でした」

妊娠中にKUNIKAさんが作った
BABYモチーフのアイシングクッキーたち

イギリスでは、妊娠中の検査・出産方法・薬や麻酔の使い方・母乳かミルクかといったさまざまな課題について妊婦自身が選択する必要があります。健康状態や家庭事情などに応じてベストな判断ができるよう、助産師たちが的確な助言を行ってくれる頼もしいサービスではありますが、英語のネイティブスピーカーではないKUNIKAさんは、続々と繰り出される専門用語に四苦八苦。スマホを味方に身振り・手振りを交えながらコミュニケーションをはかりつづけ、なんとか出産までこぎつけます。

「人によっては検診のたびに担当の助産師さんや受けるアドバイスが変わって戸惑うことがあるようですが、私は幸運なことにずっと同じ助産師さんに診ていただくことができました。ほかの妊婦さんと同じように、陣痛が激しくなってから入院して出産し、その日のうちに子どもと一緒に帰宅。日本でも、第3子出産後にわずか7時間で退院したキャサリン妃が話題になりましたよね? イギリス流スピード出産は本当に驚きの連続でしたが、王妃も一般市民もみんな平等。『郷に入れば郷に従え』ですね

公園を散歩しながら日光浴。
健やかに親子を育む大切な時間

出産にともない、フリーランスで仕事をしている夫が取れた産休はわずか1週間ほど。3歳児未満の保育料が非常に高額なことで知られるイギリスでは、出産後、預け先のない状態で早々に復職するのが難しいと判断したKUNIKAさんは『sketch』を退職。以降、息子さんが1歳を迎えるころまでは「大変だ!」と思う時間も余裕もなく、子育てに全力投球する日々を送ります。

「イギリスは妊産婦や子連れにとても優しい国だと感じています。日本と同じような“Baby on board!(赤ちゃんがいます)”と書かれたマタニティバッジを身に着けていたり、ベビーカーを押していたりすると、公共交通機関でどんなに混んでいても必ずといっていいほど席やスペースをサッと譲ってくれます。『つらいわよね、がんばってね!』と声をかけてくださる方もいて、身近に頼れる人がいない私にとって、人の優しさに触れられる貴重な時間ともいえます

時には母子で、時には家族で。公園での散歩はKUNIKAさんにとって大切な息抜きの時間

日中は育児に奮闘し、家族が寝静まった深夜の時間帯を創作の時間にあてているというKUNIKAさん。息が詰まりそうなワンオペ育児に悩まされているのではと心配になりますが、ご本人はいたって冷静に今の生活を楽しんでいるようです。太陽の光を浴び、適度に体を動かし、公園に咲く花を愛でるなど、何でもない日常生活を送ることの大切さを痛感しているといいます。

KUNIKAさんが街中で撮影した八重桜。ロンドンに本格的な春の訪れを告げる大切な役割を担っています

「冬のロンドンはとても寒くて屋外に出るのすら億劫なうえ、どこへ行くにも息子をバギー(pushchair)に乗せてお出かけしなければならずひと苦労。しかも最近『乗りたい! 降りたい!』といった意思表示がはっきりしてきたので、正直に言うと大変です(笑)。でも、貴重な晴れ間を狙って一緒に近所の公園へ散歩に出かけ、日光浴をするのがとても楽しい。最近は花のつぼみがほころび始め、ようやく春が訪れようとしているので、本当に待ち遠しいですね。ロンドンの桜も本当に見事なんですよ」

素材そのものの味をシンプルに楽しむ、
お菓子のプロのティータイム事情

午後の時間に紅茶と軽食をゆったりと楽しむアフタヌーンティーをはじめ、紅茶にまつわるさまざまなカルチャー発祥の地ともいえるイギリス。スイーツアーティストであるKUNIKAさんは、本場でのお茶とお菓子のマリアージュをどのように楽しんでいるのでしょうか?

「自宅では主にノンカフェインのお茶を飲んでいます。友人に薦められて知った『Dragonfly Tea』というブランドのアールグレイルイボスティーが好き。スーパーで3〜4ポンドと比較的お手頃に手に入ります。お茶のお供は、街のベーカリーで買ったクロワッサンやスコーン。日本には、デパ地下にずらりと並ぶ銘菓店や、街を代表するような名物パティスリーなどがたくさんありますし、スーパーにもコンビニにもお菓子が豊富。おいしいものであふれていて本当にすごいです! ロンドンとはまったく環境が異なるので、ときどき恋しくなるくらい(笑)」

ロンドンにいながら抹茶を使ったスイーツや日本茶・日本酒などが楽しめる和カフェ
「かつて100」の代表的な人気メニュー・抹茶のミルクレープ(https://www.katsute100.com/

「日本のスイーツが恋しくなった時は、『かつて100』という和カフェでスイーツをテイクアウト。抹茶のミルクレープをほうじ茶や玄米茶と一緒にいただくのが好きです。また、Afternoon Tea LIVINGとのコラボ第1弾に登場したティーウエアでFortnum & Mason(フォートナム・アンド・メイソン)の紅茶も大切に飲んでいますよ」

次回、4月16日(水)に公開予定の連載第6回目は、KUNIKAさんとAfternoon Tea LIVINGとのコラボレーション・コレクション第2弾『HOTEL KUNIKA』の企画・開発背景についてたっぷり語っていただきます。
お楽しみに!

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