『AFTERNOON TEA JOURNAL』は、心の贅沢を愉しむ方々をゲストにお招きし、生活をちょっと豊かにするアイデアやインスピレーションをお届けするライフスタイルメディアです。
4人目のゲストは、昨年Afternoon Tea LIVINGとの初コラボレーションを果たした、ロンドンを拠点に活動するスイーツアーティストのKUNIKAさん。競泳選手を目指して水泳に明け暮れた少女時代から一転、パティシエを志して進学し、一流ホテルやヴィンテージショップに勤務。日本初の“スイーツアーティスト”として独立し、人気を博したのち渡英。現地でのパティシエ業やコロナ禍下での結婚・出産を経て、現在は子育てをしながら創作活動に勤しむ彼女の激動の人生を全8回にわたってお届け。第2回目は、唯一無二のスイーツアーティストとして名を馳せるまでに至ったKUNIKAさんの輝かしい実績をご紹介します。
KUNIKAさんを石垣島から東京へ、のどかな島暮らしから刺激にあふれた創作の道へと早急に強く引き戻すきっかけとなったのが、渡航前に手がけたファッション撮影プロジェクトで味わったものづくりの楽しさ。旧知のヴィンテージショップ人脈がもたらした縁で、2010年代当時、“青文字系”ファッション誌『Zipper』(祥伝社)・『KERA』(インデックス・コミュニケーションズ)などで活躍したカリスマモデル・AMOさん初のスタイルブック『AMOSTYLE』(ワニブックス/2013年刊)のビジュアル撮影で使うスイーツづくりを依頼されたKUNIKAさんは、敬愛するAMOさんのため、渡航スケジュールを延期。わずか5日間のうちに、撮影用の可愛いケーキやクッキー類数十個をたったひとりで作り上げます。
「『パステルカラーで、マリー・アントワネットみたいなロマンティックな世界観を作りたい!』というAMOちゃんのリクエストに応えるべく、パールやラインストーン・白鳥のオブジェや羽根をたっぷり飾ったシュガーケーキや、星・バラの花・ハートなどをあしらったカップケーキ・アイシングクッキーなどを作りました。モデルさんをはじめ、フォトグラファー・スタイリスト・ヘアメイク・編集者などプロのクリエイターが集う撮影現場にも立ち会い、みんなで力を合わせてひとつの世界観を作り上げていく素晴らしさを知ったんです。その時の感動と、『私も、自分の中にある大好きな世界を形にして表現したい!』という衝動を抱えたまま石垣島へ行ったものですから、作りたいものや表現したいことのアイデアと大自然が与えてくれるインスピレーションがないまぜになってあふれ出し、メモをとる手が止まりませんでした」
石垣島から東京へ戻ったKUNIKAさんは『純粋に自分が作りたいものを作り、たくさんの人に見てもらう』という夢を実現させるため、さっそく個展の準備に着手。一方で生活費を賄うための仕事探しをするなかで、AMOさんとの関係を築いてくれたヴィンテージショップのオーナーで人気モデルだった野村仁美さんから声がかかります。学生時代から顧客として店に通い続け、販売するアクセサリーづくりのお手伝いまでしていたKUNIKAさん。「将来はお店にカフェを開けたら素敵かも」という夢を抱いていた彼女は野村さんのオファーに応じ、オンラインショップ担当として、商品の採寸・撮影・商品説明・顧客対応などを手がけます。6ツ星ホテルのパティシエからアパレルショップスタッフへと大胆な転身を遂げますが、この時の選択が、アーティストへの道をグッと縮める決定的なターニングポイントとなりました。
「野村さんのお店としてモデルさんやスタイリストさん御用達でしたので、多くのファッション業界の方と顔見知りになりました。また専門学校時代から、お店の周年パーティやモデルさんのお誕生日などに、凝ったケーキやアイシングクッキーを差し入れしては喜ばれていて、私のお菓子は口コミで評判だったようです。そんななか出版された『AMOSTYLE』で作品を見たファッション雑誌の方々から、撮影用プロップスイーツの作成依頼をいただくようになりました」
2013年4月に原宿で開催した初の個展『World of Milky Way』には、4日間でのべ100人が来場。同年7月に伊勢丹新宿店で2度目の個展『Atrantis of Milky Way』を開催し、一般客と併せて多くの業界関係者の耳目を集めます。続いて9月に、渋谷PARCO PART 3にて、ファッション雑誌『LARME』とのコラボレーションプロジェクトを実現。3度目の個展『〜Dreamirage〜』を開催するほか、来場者に配布するノベルティクッキーや誌面と連動したアートワークまで総合的に手がけ、描き下ろしたイラストは館のエントランスを飾りました。
「パティシエでなくても、お菓子づくりを通してたくさんの人に喜んでもらえていることが新鮮で、うれしくてたまりませんでした。次から次にやってくる新しい依頼に挑戦するのはとても勇気が要りましたし、試行錯誤しながらの創作活動でしたが、来たチャンスはひとつたりとも逃すものかと、目の前の仕事を無我夢中でやり遂げ続ける毎日でした」
立て続けに3度もの個展を完遂したKUNIKAさんのもとには、ファッション雑誌やグラビア雑誌の撮影用プロップ制作やアートディレクションのほか、人気キャラクターとのコラボグッズ制作、ブランドのノベルティクッキー制作、タレントやアーティストのバースデーケーキ制作など、お菓子づくりの枠を超えたさまざまな依頼が殺到します。お菓子とアートを融合させたユニークな取り組みを次々と成功させるKUNIKAさんに「ここまできたらもう“スイーツアーティスト”を名乗ったら?」とアドバイスをくれたのが、働き続けていたヴィンテージショップの仲間たちです。
「アーティスト活動とアパレルの仕事を両立させるため、週5日から3日にシフトを減らしてもらっていたのですが、両者のバランスをとるのが本当に難しくなっていよいよ退職を覚悟した時に『古着屋さんに所属するアーティストってことでよくない?』と、私のために新しい枠を設けてくださったんです! 経済的にも精神的にも支えていただき、本当に感謝しかありません」
晴れて“スイーツアーティスト”の肩書きを名乗るようになったKUNIKAさんは、2014年7月に4回目の個展『Twilight Magic』を開催。有料にもかかわらず10日間でのべ1700人を動員します。雑誌やコラボプロジェクトでKUNIKAさんを知り、Twitter(現X)やFacebookなどで個展情報をキャッチしてやってくるギャラリーが多いことに気づいた彼女は、自身の作品をより多くの人に見てもらうため、また営業活動なしにスイーツ関連の仕事を引き寄せていくためには、コンスタントに個展を開催し、SNSで継続的に情報発信することが必要不可欠だと強く意識するようになります。
以降、2015年5月に5回目の個展『EDEN』を、同年9月に6回目にして初の全国7都市を回る個展『Voyage』を開催。いずれも8日間でのべ2000人以上のギャラリーを動員するまでの規模になりました。仕事として依頼される案件の内容もますます多岐にわたるようになり、商業施設のウィンドウディスプレイプロデュース・ファッション雑誌での連載スタートや企画ページの総合ディレクション・アイシングクッキーのレシピ本やアートワーク集の出版などを手がけます。
学生時代から憧れ続けたファッションやアートの世界を舞台に、現場をともにする多くのクリエイターたちを味方につけながら「前人未到のアプローチで斬新なものづくりをし、時には作品に、時には仕事にして、たくさんの人に届けて喜んでもらいたい!」という夢を次々と実現し、スイーツアーティストの地位を確固たるものとしたKUNIKAさんは、2017年、3年間お世話になった所属先のヴィンテージショップを辞し、独立を決意。活躍の場をますます精力的に広げていきます。
次回、3月26日(水)に公開予定の連載第3回目は、
日本での活動にひと区切りをつけ、
海外に拠点を移して
新境地に挑むKUNIKAさんの成長を追いかけます。
お楽しみに!