vol.4 「身近な食材を秋味に。ぶどうと栗のチキンソテー」

2021.09.28
Buyer Aya Okunishi
Buyer Aya Okunishi

ダイニングシーン バイヤー奥西彩が、毎月フードクリエイターをゲストに迎え、お菓子やお料理でアフタヌーンティーの器を彩っていただき、そのレシピと食にまつわる話題をお届けします。

今月のゲスト:ワタナベマキ(料理家)

プロフィール

ワタナベマキ(Maki Watanabe)

1976年生まれ。 グラフィックデザイナーを経て料理家に。2005年に「サルビア給食室」を立ち上げ、料理の活動を始める。 素材を生かした体にやさしいごはんに定評があり、雑誌や書籍、広告へのレシピ提案、料理道具の開発など多方面で活躍。著書に『ワタナベマキのスパイス使い』(グラフィック社)、『うちの台所道具』(主婦と生活社)など多数。instagram @maki_watanabe

ぶどうと栗のチキンソテー

「身近な食材の鶏肉を、ぶどう、栗、胡桃など旬の味覚と一緒にソテーして、秋らしさを表現しました。ぶどうを果物として食べるのではなく、料理に使うことで甘味と酸味が鶏のジューシーな旨味と合わさって、深みとコクのある味に仕上がります」

<材料>(2人分)
鶏もも肉 2枚(300g)
玉ねぎ 1/2個
ぶどう(大粒) 8個
マッシュルーム 6個
生栗(甘栗などでも可) 6個
胡桃 8粒
にんにく薄切り 1片分
タイム 4〜5本
塩 小さじ1/2
粗挽き黒胡椒 少々
オリーブオイル 小さじ2
[ A ]
白ワイン 大さじ3
バルサミコ酢 大さじ1
しょうゆ 小さじ2

<作り方>
1. 生栗は、熱湯に15分浸し、鬼皮をむく。
2. 鍋に①を入れ、かぶるくらいの水を加えて、ひと煮立ちさせてから10分茹でる。この工程をもう一度行う。
3. 鶏肉は常温に戻し、ペーパーでふき余分な脂を取り除いたら、皮目に薄力粉をはたく。
4. 玉ねぎは縦にスライスし、ぶどうは2等分に、マッシュルームは縦に2等分にそれぞれ切る。胡桃は粗く刻む。
5. フライパンにオリーブオイルを入れ、中火で熱したら、③を皮目から焼き詰める。

6. ⑤をヘラで抑えながら、パリッと焼き目がつくまで焼いて裏返す。出てきた油をペーパーで拭き取り、塩小さじ1/4をふり、タイムを加える。
7. 2等分した②と④を加えたらサッと炒め、弱めの中火で鶏肉に火が通るまで7、8分程焼く。

8. 鶏肉を取り出し、残りのフライパンに、Aを加えて煮立たせながら1分ほど煮詰め、塩小さじ1/4を加える。
9. 鶏肉は食べやすい大きさに切り、器に盛り、⑧を添え粗挽き黒胡椒をふる。

料理家・ワタナベマキさん×バイヤー奥西彩 おいしいトーク

バイヤー奥西彩(左) 料理家・ワタナベマキ(右)

「料理も器も季節感とぬくもりを大切に」

和洋どちらにも使える美濃文山窯の器

奥西彩(以下、奥西):お料理の盛り付けにアフタヌーンティー別注の美濃文山窯の器を使っていただきましたが、率直なご感想をお聞かせください。

ワタナベマキ(以下、ワタナベ):この薄いお皿はとてもいいですね。焼き物でも厚くてぽてっとしているものより、私はエッジがシャープなものを使うことが多いので、まずその点が気に入りました。そして、ピンクの色もとてもきれい。色のバリエーションがあるので、同じ焼き物でも色が変われば、雰囲気も変わりますし、質感がマットかツヤかでも全然違うし、組み合わせを楽しめそうです。深いグリーンも好みです。

奥西:エッジに気づいていただけるとは嬉しいです。ピンクのお皿はツヤがあると、可愛すぎてしまうので、そこはこだわりました。

ワタナベ:確かにマットだから大人っぽいですし、料理にもすごく合うと思いました。

プレートM(直径21cm) ¥1,980 プレートS(直径15cm) ¥1,100 ボウル(直径14.3cm)¥1,430 マドラー¥550

奥西:ピンクは焼き物で色出しするのが難しく、色が沈みすぎてしまったりするようです。これは焼き物の一大産地である美濃焼ですが、数ある窯元の中でも、美濃文山さんは優しいピンクを出すのが一番上手だと思います。美濃には個人の作家さんもいれば、機械で大量生産する窯元もありますが、美濃文山さんはちょうど中間のような存在で、作家さんレベルの手の込んだ仕事と、アフタヌーンティーのような全国120店舗に展開するだけの数量を製造できるプロダクトとしての安定感もあります。

また、美濃焼は規模が大きいので、ほとんどは土、型、釉薬とそれぞれの専門分野に特化した分業制です。そんななか100年以上続く美濃文山さんの四代目・伊藤公一さんは、分業に頼らず土も自分たちで配合したり、好奇心というかクラフトマンシップに溢れているので、こういうものを作りたい、作りたいけどうまくいかないという相談にも素早く対応してくださいます。研究熱心ですが、かといって尖ったものを作りたいというわけではなく、人の暮らしに溶け込む、使ってもらえてこそという民芸に近い考えをお持ちなので、土ものでも軽くて使いやすいといった実用性を重視されています。

器選びの決め手は、料理のひらめきと手のぬくもり

奥西:マキさんがご自身で器を買うとき、何か決め手はありますか?

ワタナベ:器を買いに行くときは、まず店頭で器を見て、これにこの料理を盛りたいと思えたら、家にあってもいいかなと、買うようにしています。だから何もひらめかないものは、今ではなく一呼吸おきます。

奥西:器を買うときのひらめきを大事にされているのですね。そのなかでも、ここの産地や窯元がいいとか、こういうテイストがいいとか何か共通する要素はありますか?

ワタナベ:なんとなく手のぬくもりが感じられるものが好きです。使っていくうちにどんどん育っていくように、この器もそうですが、少しずつ貫入が入り味が出てきて、かっこよくなりますよね。そういう時間の経過による味わいもいいと思います。

奥西:ハレの日と普段使いで器を使い分けていたりもしますか?

ワタナベ:特に使い分けてはいません。例えば、ツヤとマットの器を組み合わせ重ねて使うだけで、特別感が出て印象が変わります。母の世代だと大切な器はお客様用や特別な日のためにしまい込んで、結局全然使わないという感じですが、私には全くそういう感覚はなく、どちらかと言えば、どんどん普段から使いたいほうです。

奥西:確かに組み合わせ次第ですよね。このシリーズに合わせてお箸も作りましたが、お箸でコーディネイトしてもいいし、洋のカトラリーを合わせてもいいですよね。今回は和の食器に洋のお料理を合わせて、お箸でいただくという和洋折衷のコーディネイトも意識しています。

ワタナベ:それこそおうちのごはんの基本というか、普段の食卓ですよね。おうちで使うなら、大きめのプレートはメインを一品盛り付けてもいいし、大皿料理がいくつかある時は、取り皿として使える。小さめのプレートには野菜のお浸しはもちろん、ケーキをのせても合いそうですし。

奥西:朝昼晩いつでも使えることもポイントです。食パンや、おにぎり2個に卵焼きとから揚げとか、一番いいサイズ感を考えて選びました。さらに手作業による撥水の線引きでストライプという柄物にも挑戦したのですが、メイド・イン・ジャパンの柄物の器はハードルが高いと思われがちなところもあります。スリップウェアなど民芸の器も使いこなしているマキさんに、柄物の器を取り入れるコツを教えていただきたいです。

ワタナベ:私は無地の感覚で使っています。だけど、最初は無地のプレートと小さめの柄の器を組み合わせて使ってもいいと思います。

ボウル(直径14.3cm)¥1,430 マグカップ¥1,540

料理と器のコーディネイトは季節感が大事

奥西:料理と器をコーディネイトする上でのポイントがあれば教えてください。

ワタナベ:器使いに季節感が出ると思うので、そこはよく考えます。濃い茶色は秋冬のイメージですが、薄い茶色なら秋冬だけでなく年中使いやすい。真っ白の器は、冬に使うには冷たく寒そうに見えてしまうから、同じ白でもベージュやアイボリーなどの温かみのある白にするとか。今回のお皿もエッジだけを見るとシャープに感じますが、やっぱり美濃焼という和食器ならではの土の温かさがあります。コーディネイトという点では、果物は食材の中でも季節感がわかりやすいので、ピンクのお皿には、今ならぶどう、春は野菜ですがそら豆、夏はスイカをのせてもきれいですよね。

奥西:年中使えはするけど、季節ごとに旬の食材と組み合わせで、春っぽく見せたり、秋っぽく見せたりするということですね。

プレートM(直径21cm) ¥1,980 プレートS(直径15cm) ¥1,100 ボウル(直径14.3cm)¥1,430 抗菌箸¥1,100 箸置き¥550 耐熱ゴブレット¥1,100

料理は自分の考えを伝える表現手段

奥西:もともとグラフィックデザインのお仕事をされていましたが、料理のどんなところ魅力を感じたのでしょうか?

ワタナベ:料理だと人にきちんと説明ができるからですかね。グラフィックでは上手に人に説明できなかったのですが、料理だったら納得して、どうしてこういう味付けにしたか、こういう組み合わせにしたかを説明ができると思い、仕事にしようと決めたんです。料理は自信をもって考えを伝えられる表現手段になっていきました。

奥西:では、今回のメニューはどういうところから発想されたのですか?

ワタナベ:まず、秋の素材をたくさん使いたいと考えて、最初に浮かんだのがぶどうでした。それから器を見たときに、どの色もぶどうの濃い色と合いそうだったので、ぶどうを使った温かい料理にしよう、ソテーにしてぶどうをソースにしようと思い付きました。身近な料理のチキンソテーに、ちょっと秋らしさを出して、そこに栗も入れちゃおうみたいな。

奥西:ぶどうに火を通すという発想は、多くの家庭ではなかなか思いつかないかもしれませんが、そういうちょっとした工夫はアフタヌーンティーの「半歩先の提案」という考え方にも通じます。

マキ:近頃はぶどうを果物として食べるだけでなく、料理に使うということへのハードルが下がってきたと思います。ぶどうを入れることで、甘味と酸味が加わり、鶏の脂と合わさって、秋っぽい深みとこくのある味に仕上がります。もし、そこにレモンをギュッと搾ると一気に夏っぽい酸味になってしまいますが、今回は酸味を入れずに甘味を強めにしました。

奥西:ところで、マキさんのお料理に欠かせないものとして、醬(ジャン)やスパイスがあると思いますが、定番料理でもこれさえあれば味の雰囲気をガラッと変えられる、おすすめのスパイスや醬を教えてほしいです。

マキ:持ってはいるけど、使っていないクミンやコリアンダーがあるという人は多いと思います。今回のお料理は、シンプルにタイムのハーブを入れて、最後に黒胡椒をふったぐらいですが、それこそクミンを入れても美味しいし、スパイスって実はすごく使えます。使いすぎず、ほんのり香るぐらいなら割と何にでも合うし、牛やラムだったら負けないぐらいいっぱい入れたほうが風味が立ちます。スパイスを塩胡椒のような感覚でもっと取り入れてほしいですね。

ワタナベマキさんの著書。愛用のキッチン道具を紹介する『うちの台所道具』(主婦と生活社)、日々の料理にスパイスのちょい足しを提案『ワタナベマキのスパイス使い』(グラフィック社)

誰もが取り入れやすいアイデアをシェア

奥西:料理はもちろん道具選びも、わかりやすく取り入れやすいプロの技を教えてくださるのが、一般の人たちにはとてもありがたいです。私もぬか漬けを作っていますが、マキさんが本で紹介されていたように、常温の小壺と冷蔵庫にはきゅうり一本が入るくらいのタッパーのダブルで使っています。ぬか床を小分けにするのは一人暮らしの小さい冷蔵庫でも応用できるアイデアです。それに丸いまな板も真似しました(笑)。

ワタナベ:丸いまな板はスペースが小さくても収まるということと、カットしたものをそのまま鍋やフライパンに入れやすいんです。でも30代の頃はいろんなものを買って、失敗もたくさんしました。そうやってだんだんベストなものや使い方に行き着いていったのだと思います。

奥西:愛用の道具を紹介する本も出されていますが、道具はいろいろ試したり、集めていらっしゃるんですか?

ワタナベ:道具売り場は好きなので、見かけるとついのぞいてしまいます。器と同じように道具も使っているうちに育っていくと思うので、やはり長く使えるものが好きです。だから使い始めたら、10年選手のような年季の入ったものが多く、ほとんど全部が現役でどれも一軍。でも、たまに雑貨屋さんに行くと、新しいものを見つけてセレクトしてくれているから、こんなものがあるんだとか、知らないものがいっぱいあって面白いです。

奥西:そういうワクワクをお届けするのが私たちの仕事ですが、例えば、こういう器があったらいいのにと思いつくものはありますか?

ワタナベ:やっぱりオーバルですね。大きいものもお一人様用の小さいものもあるけど、前菜を3種並べたりと、何かと使えるので便利。しかも少し雑に盛り付けたとしても格好がついて見栄えがします。業務用の食器では白いオーバルがよくありますが、美濃文山窯さんのようなグリーンがあったらかっこいいですよね。色ものがあるとすごくいいと思います。サイズは18cmぐらいの小さいめもよさそう。オーバルだとお料理が美味しそうに見える気がします。

奥西:確かにテーブル上でのバランスもいいし、丸皿と組み合わせればリズムも生まれます。どちらかというと洋のイメージが強いですが、和のお料理を盛り付けて、和洋折衷のような提案にしてもいいかもしれませんね。次は定番のオーバルを作りたいと思います。


Photographer:Wakana Baba


※写真撮影時以外はマスクを着用し、十分な距離を保ち安全に考慮しております。


   


この記事を書いた人
Buyer Aya Okunishi
Buyer Aya Okunishi

ダイニングシーン担当バイヤー。調理師免許を持ち、レストランでの勤務経験もあり。得意料理はトマトソースパスタ、趣味はジャムなど保存食づくりと器集め。旬の食材や料理を思い浮かべ、器との組み合わせを考えながら商品開発を行う。日本の産地の素晴らしい技術や経験が受け継がれるよう、ストーリーのある商品をお客様にお届けすることを使命としている。 このコラムは奥西がずっとお会いしてみたかった憧れのフードクリエイターにお話を伺っていく連載企画です。

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