vol.3 「本場で人気の味。タイ南部のポークのスパイス炒め、クアクリンムゥ」

2021.06.22
Buyer Aya Okunishi
Buyer Aya Okunishi

ダイニングシーン バイヤー奥西彩が、毎月フードクリエイターをゲストに迎え、お菓子やお料理でアフタヌーンティーの器を彩っていただき、そのレシピと食にまつわる話題をお届けします。

今月のゲスト:アベクミコ(タイ料理人)

プロフィール

アベクミコ(Kumiko Abe)

タイ料理人。アパレルブランドなどを経て、タイ料理人に。2018年東京・東中野でDDDスタート。出張料理、ケータリング、料理教室に加え、完全予約制のプライベートダイニングも行なっている。その他、さまざまな料理イベントやオンラインショップ( https://ddd2020ddd.stores.jp)も人気。instagram @peaceful1024


クアクリンムゥ(タイ南部のポークのスパイス炒め)

「日本ではあまり知られていませんが、数年前からバンコクの食通たちの間でブームとなっているのが、タイ南部の郷土料理です。なかでも、ご飯のおかずとしてはもちろん、生野菜と一緒にディップとしてもお酒のお供としても楽しめる、ポークのスパイス炒めは、辛さを効かせた、暑い夏に食欲をそそる一品です」

<材料>(4〜5人分)作りやすい分量
豚肩ロース肉(ブロック) 300g
レッドカレーペースト 50g
カミン(生ターメリック) 約30g 
タクライ(生レモングラス) 1本
ピッキヌー(生唐辛子) お好みで適量
ブラックペッパー(ホール) 5、6粒
砂糖 小さじ1〜適量
ココナッツシュガー 小さじ2〜適量
カピ 小さじ1〜適量
サラダオイル 50cc〜適量
バイマックルー(こぶみかんの生葉) 6、7枚
カー(生ナンキョウ、柔らかい部分) 50g
 ※生を使用しているハーブ類は冷凍でも可

 <付け合わせの例>
野菜(ナス、キュウリ、いんげんなど)
ハーブ(バイホラパー、パクチーファランなど)
ライスベリー入りジャスミンライスなど

<下準備>
カミンは皮をむく。タクライはみじん切り、ピッキヌーは小口切り、バイマックルーは極細の千切り、カーは細めに千切りにする。豚肩ロース肉は叩いて粗めのミンチにする。

<作り方>
1.  カミン、タクライ、ブラックペッパー、ピッキヌーを固い順にクロック(タイの石臼)で潰し、レッドカレーペーストを加えてよく混ぜ合わせる。
※フードプロセッサー、すり鉢などで代用可。その場合は包丁の背などで叩いて香りを出してから潰すのがコツです。
2.  鍋に①とサラダオイルを入れ、弱火にかける。馴染ませながら香りがでるまで炒める。
3.  中火にして、ミンチした豚肉を加えて炒める。

4.  豚肉の表面の色が変わったら、ひたひたになるくらい水(分量外)を加えて中強火にする。
5.  ④に砂糖、ココナッツシュガー、カピを加える。
6.  水分を飛ばすように炒め、カーを加えてさらに炒める。
※このとき焦げやすいので注意してください。
7.  ほぼ水分がなくなったら、バイマックルーを加えてさっくり混ぜ合わせ、火を止める。

<副菜>
ゲーンソムプラー(タマリンドカレー)
プラートードカミン(ターメリック揚げ)
ドラゴンフルーツ

タイ料理人・アベクミコさん×バイヤー奥西彩 おいしいトーク

タイ料理人・アベクミコ(左) バイヤー奥西彩(右)

「予定調和は苦手、お料理もお皿もどこかに抜け感を」

タイ料理に惹かれた理由

奥西彩(以下、奥西):他にもアジアのお料理はたくさんありますし、食材も似通っている部分もあると思うのですが、数ある中でなぜタイ料理だったのですか?

アベクミコ(以下、アベ):私が会社に勤めていた当時、タイのバンコクに工場があったので、よく出張で行っていたこともあり、馴染みがありました。会社を辞めてからホームステイをしたり、年に何回か行き来を繰り返すうちにすっかり好きになってしまいました。

アジアの他の国も好きで訪れますが、食事については味付けが比較的似ているものが多く、3日もいれば飽きてしまうことも。その中でもタイは、バリエーションが豊富で全く飽きません。北部はミャンマーの影響を受けていたり、南部はマレー半島の流れがあったり、蟹と卵をカレー粉で炒めたプーパッポンカリーは中国料理の影響があったり。東南アジアで唯一植民地になっていないという歴史もあり、昔の文化がそのまま残っていて受け継がれているような気もします。日本なら、テリヤキバーガー、和風パスタのように外国からの食文化を日本独自のものに転換していますが、タイもそれに近いかもしれません。その全体のバランスみたいなものが私の好みに合うのかもしれません。

奥西:タイ料理は味のバリエーションの幅が広いとは知りませんでした。日本にあるタイ・レストランのメニューはどれも似ているような気がしていました。

アベ:90年代のエスニックブームに日本に入ってきたタイ料理は東北地方のシェフが多かったようです。例えばトムヤムスープの味付けにナムプリックパオという調味料を入れれば、簡単に誰でも同じ味になるので、そんな印象が日本人には強いのかもしれません。現在のバンコクのフーディー(食通)の人たちが好んで行くレストランは、日本と値段も変わらず、今ならビオワインとクラフトビールばかり。人気のおしゃれなレストランは全く予約が取れないことも多いです。

クアクリンムゥはたくさんの野菜やハーブを付け合わせてディップとしても楽しめます。

タイのリアルな食文化と人気グルメを紹介する

奥西:今回のメニューに選んでいただいた「クアクリンムゥ」は、どういったお料理なのですか? 

アベ:私がタイによく行っていた数年前から、南部料理のような地方料理を新しく解釈して、かっこいい空間で提供するというスタイルが流行し始めていました。10数年前には、バンコクにそれこそ3軒程しかなかった南部料理が、最近はすっかりブームになっています。ですが、南部料理自体はまだあまり日本で紹介されていなく、ちょっと目新しさがあるのと、辛さが特徴的なレシピなので、これからの暑い季節にぴったりだと思いました。

奥西:付け合わせにハーブをたくさん使っていますが、タイ料理ではハーブを取り入れるのが当たり前の習慣なのでしょうか?

アベ:タイではハーブは野菜の一種のように、スーパーでもどこでも簡単に手に入るのでたくさん使います。同じアジアでも、インド、スリランカなどとちょっと違うのは、乾燥したスパイスではなく、フレッシュなハーブがメインということですね。クアクリンムゥでも使っていますが、カミン(ターメリック)は乾燥の粉末もありますが、このお料理にはやっぱり生でないと別のものになってしまいます。

奥西:今回は辛さ控えめに作っていただきましたが、ご飯が進む味ですよね。しかも、付け合わせでたくさんの野菜が食べられるのがうれしいです。

アベ:クアクリンムゥは、どちらかというと炒め物ですが、ディップとして食べるのもいいと思います。タイ料理ではディップの種類がとてもたくさんあって、ディップと生野菜をセットにしてご飯のおかずにしたりお酒を飲むというのが一般的な食べ方です。

抜け感やミクスチャー感が盛り付けのマイルール

奥西:アベさんが料理を盛り付けるときにこだわっているテクニックのようなものがあったら、ぜひ教えてください。 今回はプレートの下にランナーのように敷いたバナナの葉が夏っぽくて素敵でした。

アベ:バナナの葉はいい逃げ道になりますよ(笑)。出張料理で先方のお皿を使うとき、お料理と合わないこともあるので、そういうときにはバナナの葉が助けてくれます。

奥西:バナナの葉をプレートの上に敷いておくと、後片付けも楽ですね。他にも盛り付けの際に心がけていることはありますか?

アベ:やりすぎにならないようにしています。いかにもというか、予定調和的なのは避けますね。ファッションもそうですが、ピシッと決まりすぎているのはあまり好きじゃないから、どこで抜け感を出すかはいつも考えているというか、自然にそうなっているかもしれません。料理も一緒で、いかにも(笑)インスタ映えを狙うのはちょっと苦手。タイ料理にヨーロッパのアンティークのお皿を組み合わせるのは、ミクスチャーみたいなことが好きだからなのだと思います。

ロゴワークス パスタプレート(直径23.5cm 高さ3.7cm)¥1,980 ボウルM(直径15cm 高さ5.5cm)¥1,540 ボウルS(直径11cm 高さ4.8cm)¥1,100

LOGO WORKSを組み合わせて料理を楽しむ

奥西:今回の盛り付けには、ロゴワークスを使っていただきました。こういうシンプルで和洋使える家庭用の器は、普段はあまりお使いにならないような器だと思うのですが、盛ってみていかがでしたか?

アベ:サイズや形状、丈夫さもご家庭で使いやすいと思います。この淡いトーンがすごくいいし、食材を選ばずになんでものせられそうですね。例えば、アクセントに強い色の器や質感の違うレンゲを組み合わせたり、異素材のものとも違和感なくしっくりきて何にでも合うから使いやすいと思います。

ロゴワークス ボウルM(直径15cm 高さ5.5cm)¥1,540 ボウルS(直径11cm 高さ4.8cm)¥1,100

奥西:メインで使っていただいたお皿は平らに作るのがかなり大変でした。Lサイズのパスタプレートは、小さめのボウルと組み合わせて、ワンプレート使いもしていただけます。

アベ:小さめのボウルにディップを入れて、プレートの真ん中に置いて、その周りに野菜を盛り合わせたりしてもよさそうです。他にフルーツを入れてもいいかもしれません。大きいほうは、お浸しなどを真ん中にちょっとだけ、余白を活かして盛るとおしゃれな雰囲気が出そう。

奥西:確かにいいですね。ロゴワークスシリーズは、白とグレーが定番で、半期ごとにシーズンカラーを出していて、春夏はブルーでした。今回は白を合わせていただきましたが、アベさんのお持ちの器には、ブルーっぽいお皿が結構あるから、寒色でも合いそうな気がしました。それに、バナナの葉との相性もよかったです。

アベ:あえて一色で揃えず、色を組み合わせてコーディネイトしても可愛いですね。手持ちのお皿と組み合わせて使うと、逆にシンプルなデザインが活きるし、しっかり質感もいいから馴染むと思います。

バラバラなのに統一感がある器選びのセンス

アベ:スチールっぽいとか、無彩色のもの、色だとしてもカラフルでなく単色使い、少し無骨な古道具のような感じが好みです。国は関係なくデッドストックやヴィンテージのようなお皿、キッチュなもの、アルミや琺瑯のお皿を使うことも多いです。最初におかずをヨーロッパのアンティークのオーバルで出して、取り皿や最後の〆カレーには、現地の食堂で使っていそうなアルミやプラスチックのお皿というように料理や出し方で使い分けています。意外にヨーロッパのアンティークとも相性がいいですし。タイ料理だからといって、タイの食器だけを使うわけではありません。というのも、タイの伝統的なセラドン焼、ベンジャロン、ブルー&ホワイトは実はあまり好きではなくて(笑)、持っていないのです。豪華で高級感のあるものや、真新しいものはあまり使いませんね。

奥西:どういうところでデッドストックやアンティークを見つけて買われるんですか?

アベ:友人がアンティークのバイヤーなので、おすすめを聞いたり、一緒に海外のマーケットに行ったり。仕入れの旅では、アンティークマーケットはもちろん、リサイクルショップや昔からある金物屋のリアルデッドストック(笑)などでも探します。デッドストックなどは、一期一会なのでもう二度と会えないかもしれないから、あるだけ全部買うことも。よくお店を教えてと言われますが、巨大な古着屋で好みのTシャツを探せるのかと同じで、そこで何を見るかはその人の感覚なのでなかなかお伝えするのが難しいのです。

奥西:お皿も金継ぎをして大事に使っていらっしゃいます。どれも味が出て、貫入が入って、いい感じの染み込みです。「貫入の器を使っていくとどうなるんですか?」と、よく聞かれますが、「こういう感じでいい味が出ますよ」というお手本みたいなお皿がいっぱいあるなと思いました。やっぱりファッションのお仕事されていたご経験や感覚が、作るお料理や器選び、組み合わせ方にも生きているように感じます。


アフタヌーンティー・ティールームのカレーにタイのハーブ&エッセンスをプラス

左から、チキンカレー¥530 チキンとレモンのクリーミーカレー¥530 トマトキーマカレー¥580

アフタヌーンティー・ティールームで人気のカレー3種。タイ料理人・アベクミコさんに、ちょっとの工夫で、さらに楽しめるアレンジレシピをご紹介していただきました。

リムレンジ 山中塗オーバルボウル(縦16cm 横26cm 高さ5cm)¥1,540 ホーローカレースプーン(18cm)¥770

チキンカレー
・ミントとパクチーのナムプリック(ディップ)(ミント、パクチー、酢、砂糖、塩など)
・フライドカシューナッツとクミン入りジャスミンライス
・パクチー

紅茶のエキスがポイントになって、フェヌグリークやクローブなどのスパイスを感じさせる、ベーシックなイギリスっぽい印象のカレーでした。イギリス文化が残るインドやスリランカでは豆を煮たり、色をつけたりするのに紅茶を使うことがあります。イギリスのイメージからミントとパクチーのピリッと辛いナムプリックを合わせました。ミント、パクチー、青唐辛子、酢、砂糖、塩で作るシンプルなソースは、ほどよく酸味がきいていて、さわやかな辛さを楽しめます。また、ライスにはナッツやクミンを和えて食感を出しました。最初はそのまま、後からナムプリックをプラスして味を変えるのがおすすめです。


ロゴワークス パスタプレート(直径23.5cm 高さ3.7cm)¥1,980 ボウルS(直径11cm 高さ4.8cm)¥1,100 ロゴワークス ディナースプーン(19.5cm)¥990

チキンとレモンのクリーミーカレー
・フライドレモングラス(レモングラスを叩いて揚げたもの)
・サワークリーム
・さつまいもとココナッツのナムプラーバター炒め
・ジャスミンライス
・ベイクドレモン

レモンの風味と温州みかん、オレンジの柑橘系の爽やかな甘みがアクセントのカレーに、レモンと相性のいいさつまいもをココナッツとナムプラーバターで炒めてトッピング。サワークリームやクリームチーズなどを添えるとより味が引き締まり、変化が生まれます。トータルのバランスを考え、ジャスミンライスにフライドレモングランスをのせ、香りと食感をプラスしました。仕上げに軽く両面を焼いたレモンを飾って出来上がり。


美濃焼軽量磁器プレートL(直径24.4cm 高さ2.7cm)¥1,210 ロゴワークス ディナースプーン(19.5cm)¥990

トマトキーマカレー
・ナスのナムプリック(ディップ)(ナス、にんにく、ホムデン、唐辛子、塩、レモンなど)
・アボカドナムプリック(ディップ)(アボカド、ホムデン、唐辛子、塩、レモンなど)
・揚げワンタン
・フライドホムデン(タイのエシャロットを揚げたもの)
・玄米

トマトを焼いたり、マリネしたものを合わせようと思いましたが、カレーの中にしっかり形のあるトマトが入っているので、トマトに合うものと食感を楽しめるものを組み合わせました。トマトと相性のいいナス、アボカドはディップ状にして、玄米の上に重ねていき、仕上げにフライドホムデン(タイのエシャロットを揚げたもの)を振りかけ、脇に揚げワンタンを添えて。お米の代わりに、パスタやクスクスにしてもよく合います。食べるときは、いきなり混ぜ合わせずに、ナムプリックとカレーを揚げワンタンにつけたり、最初はナス、次にアボカドというように味の展開を楽しむのがポイントです。


Photographer:Yu Inohara


※写真撮影時以外はマスクを着用し、十分な距離を保ち安全に考慮しております。



この記事を書いた人
Buyer Aya Okunishi
Buyer Aya Okunishi

ダイニングシーン担当バイヤー。調理師免許を持ち、レストランでの勤務経験もあり。得意料理はトマトソースパスタ、趣味はジャムなど保存食づくりと器集め。旬の食材や料理を思い浮かべ、器との組み合わせを考えながら商品開発を行う。日本の産地の素晴らしい技術や経験が受け継がれるよう、ストーリーのある商品をお客様にお届けすることを使命としている。 このコラムは奥西がずっとお会いしてみたかった憧れのフードクリエイターにお話を伺っていく連載企画です。

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